安全な生徒指導を考える会では、「生徒指導提要」改訂だけでなく、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の見直しについても要望してきました。自殺した児童生徒の背景にいじめがある場合は、いじめ防止対策推進法が根拠となり、調査が行われます。しかし、背景に不適切な指導がある場合は、「背景調査の指針」が唯一の根拠になるためです。
まず始めたことは、私たちが開催しているZOOMシンポジウム(2022.01,22)で、この「指針」について知ってもらうことでした。
学校や教育委員会が、この「指針」を知らないこともあります。そのため、「指針」でうたわれている、自殺直後の調査=基本調査が行われなかったり、行われるとしても、自殺から時間がかかったり、遺族に知らない間に調査されていたり、事実誤認に基づいた調査がされたり、さらにいえば、遺族が持っている情報が取り扱われず、不適切な指導があったとしても無視されてしまうこともあったりします。そのため、「指針」の存在や運用実態を知ってもらいました。
その後の流れが以下の通りです。
経緯
2023年6月15日 超党派自殺対策議連「こども・若者自殺対策推進本部」からヒアリングを受ける。
2023年6月16日 安全な生徒指導を考える会が院内集会「子どもを自殺・不適切指導から守ろう」を開催(衆議院第二議員会館)。
2023年10月4日 初めて背景調査の指針に基づく調査を実態を初めて調査した。
2023年10月30日 4日の問題行動調査を受けて、青山周平・文科副大臣に要望書を提出。
①今ある指針を適切に運用することを要望
1.問題行動調査で「背景調査の指針」の運用状況の調査を継続すること
2.背景調査の指針に関する遺族への説明資料を作成すること
3.相談窓口を作り、学校と保護者からの指針に関する相談に対応すること
②今の「背景調査の指針」は10年改定されていないため、見直しを要望
1.不適切指導が背景にある自殺では具体的にどのように中立性を保つ方法があるのか検討し指針に示すこと
2.見直しをする際は遺族等関係者のヒアリングをすること
3.背景調査の指針に関係する通知等を反映させること
③自殺の原因「不明」とされてしまう件数を減らすための要望
1.不適切指導の研修を管理職にもすること
2.基本調査の結果等、「不明」と結論づけたプロセスを併せて提出させること
④「不適切な指導」の実態調査を、すでに全国で行われている体罰調査(生徒本人や保護者への調査)でできないか要望
1.「不適切な指導」を調査項目に含めている自治体を参考に文部科学省の集計項目を加えること
2.各自治体の調査項目に「不適切な指導」に関する項目を追加するよう求めること
2024年12月20日 不適切な指導の処分の詳細が初めて公表
2025年2月21日 自民党のこどもの自殺対策PTにて、子供の自殺が起きたときの背景調査の指針と、災害共済給付の問題を話す。
2025年12月26日 文科省が「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」を改訂。「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針」とする。児童生徒が自殺で亡くなった場合、遺族への説明文書を添付するようにした。そのほか、以下の点が要望した点に近づいた。
(1)児童生徒の自殺が起きたときの背景調査全体の流れの明確化
一般的な背景調査の流れを明確にするため、背景調査全体のフロー図を記載。
(3)児童生徒の自殺が起きたときの背景調査等に係る遺族への説明様式の作成
遺族への背景調査等に係る説明を確実に実施するため、背景調査の内容・災害共済給付・相談窓口を記載した説明様式(様式1)を作成。
(4)基本調査の様式の作成等及び遺族に対する基本調査結果の説明に係る記載の充実
・基本調査で実施すべき項目をまとめた様式(様式2)を作成するとともに、文部科学省及びこども家庭庁における子供の自殺に係る実態の把握のため、様式2を文部科学省に共有することを記載。
・文部科学省及びこども家庭庁において、基本調査の結果を子供の自殺に係る要因分析・研究にも活用することについて、様式2等を示しつつ、基本調査の実施後、遺族から同意を得ておくことを記載(様式3の4を参照)。
・学校の設置者及び学校は、基本調査の結果がまとまった段階で、様式2を用いて基本調査の結果を遺族に説明することを記載。また、詳細な説明を控えてほしい等の遺族の意向がある場合は、調査結果の概要を用いるなどの対応も考えられることを記載。
(5)遺族に対する詳細調査に係る意向確認書の作成等
・詳細調査について、学校の設置者及び学校の考えを伝えて、遺族の意向を確認することが必要であり、その際、電話や口頭でのやりとりに終始し、学校と遺族との情報共有が十分に図られず、詳細調査への移行が適切になされない可能性もあることから、遺族に対して詳細調査の実施に係る意向等を確認するための意向確認書(様式3)を作成
・学校の設置者等が詳細調査に移行すべきかどうかを判断する際の参考にするため、詳細調査に移行した例を記載。
(6)詳細調査の一部であるアンケート調査や聴き取り調査の先行実施等の明記
・基本調査実施中に詳細調査の一部であるアンケート調査や聴き取り調査に関する遺族の要望がある場合は、詳細調査に先行して、アンケート調査や聴き取り調査を緊急的に実施する必要があり、アンケート調査・聴き取り調査を基本調査と並行して実施することも考えられるが、詳細調査に先行して実施する場合でも、遺族の了解、児童生徒・保護者の理解・協力、心のケア体制、調査の実施体制が整っていることが必要であることを明記。
・基本調査実施中に、遺族から詳細調査への移行に関する要望があった場合には、学校の設置者の判断のもと、並行して詳細調査に向けて準備を進めることも考えられることを明記。
(7)体罰・不適切な指導等が背景にあると疑われる場合等の調査組織の考え方の明記
体罰・不適切な指導等が背景にあると疑われる自殺事案については、指導内容が適切であったかどうかやその指導と自殺の因果関係の判断について、客観的な視点から事実認定を行うことができる体制構築が必要であることから、学校の設置者が主体となり、第三者委員会方式での調査の実施を検討すべきであること等、調査組織の公平性・中立性を確保する必要性が高い場合の具体例を記載。